KUMA号、救助される! 2

エンジンが止まってしまったのである。
もううんともすんとも言わない。

どどどうしよう。
「風がないから、帆で進むこともできないしなぁ・・・」

無線で救助隊呼ぶってのはどうよ?
「それが・・・バッテリーがもう弱ってて、長距離は飛ばせないと思う・・・。」

げ。うそ・・・(号泣嗚咽)

今日に限って、波だけで風がまったくない。
ので。
エンジンが止まると、まったく動けない。
しかも風力発電もまったく使えない。

KUMA号の発電は、風力かエンジンかで行われるので、風がなくてエンジンが動かないとどうにもならなくなるということに、その瞬間気がつきました。
エンジンが故障したことがなかったんで、そういうシチュエーションを想像してなかったのですよぉ(涙)

じゃあ、どうする?
「まあ命に別状はないから、このままぷかぷか流れに任せて浮いてれば、いつかは傍を船が通った時に助けてもらうとか・・・」
・・・ショック・・・(涙涙)
電気も使えないし。
夜明けまで5時間もあるのに・・・。

パパがエンジンルームへ行ってみる。
限りのある電力なので、電気をつけることができなくて、ヘッドライトを使うしかないのです。
今までエンジンが壊れたことのないKUMA号なので、あまりエンジンを修理した経験の少ないパパ。
懐中電灯で薄暗い中点検できることも限りがあって。
「わからない・・・」
お手上げであった。


・・・と、その時後ろから明かりがくるのを私は見つけた。
傍を通る船を待つって言ったよね?
「そう。いつ通るかわからないけどね」
あそこ、あの光、船じゃない?
奇跡的に、こんな時間にこんな海の上で、船が来るのである!
「あ、ほんとだ!ラジオで呼んでみようか」

でも呼びかけても出ない。
寝ちゃってるのかなぁ・・・(涙)

「信号弾打ってみよう」
パーン!
ひゅぅぅぅぅぅ。パシュゥ。
家庭用打ち上げ花火みたいな綺麗な赤い花火が出た。うーんきれいだ。

でもラジオは応答なし。

どうしたんだろう・・・見てないのかなぁ。
意気消沈。


「いや、でもあの船捕まえないと!(次にいつ船が通るかわかんないじゃん)」
パパも必死に、懐中電灯をチカチカさせたりラジオで呼びかけたり。

あーー、気がつかないかなぁぁぁ(涙)
んん?ちょっと船が近づいた気がしない?
光の動きを見る。じーーーーーー。
やっぱり、こっち来てるよね?(喜)
「うんうん、こっち来てる!」

と、ラジオに英語で何か声が入った。
パパがもう一度呼びかけると、応えてきた。
やったーーー!!(涙)
「生命に危険あるトラブルではないけれど、エンジンが故障で船が動かないので、近くの港まで牽引してくれる船を捜してくれるとありがたいです」
『今そっちに行く』

ヨットが来た。
KUMA号より少し小さい。
『うちの船は小さいから牽引してはあげられないけれど、ディンギーで迎えに来てくれたら今一人エンジンを見に行く。』
夜中の1時半ですよっ!!そんな親切な人がいるなんてっ。
とにかく船は経験値がものを言う世界なので、もしエンジンを修理した経験がある人なら、わかるかも。
すがる思いで、迎えに行きました。

『ハァイ。僕はピーター。』
やたらてきぱきした身のこなし。船に慣れてるような・・・。
しかも、マイ工具まで持ってきてくれて。

ピーターがエンジンの止まったときの様子を聞く。
パパが説明しながらもう一度エンジンをかけてみると、一瞬かかったけどすぐに止まった。

が、彼は音でその原因に気がついたと言ったのでした。
うっそ~って思いました。
スペインで暮らしてると、こういう調子いいこと言う人多いんで、つい疑い深くなってますから(苦笑)

でもでもでも、実はなんと。
なんとなんと!!
彼はメカニック専門のクルーだったのですっ(感涙)

『フィルターだと思う。直せるかもしれないから、やってみるよ』

それから1時間。
ピーターは揺れる船底に入って、フィルターと格闘してくれたのでした。
船のエンジンにはフィルターがあるのだけれど、その他にエンジンに行く前に一度ディーゼルを漉すフィルターが付いているのだそうだ。
すごく隠れた位置にあったせいで、この存在をパパは知らなかったので、換えていなかった。
取り出されたフィルターは、おかげで真っ黒に汚れていて、ディーゼルがエンジンに送られなくなっていたのであった。

『とりあえず、フィルターを洗ってやってみよう』
パパが横でディーゼルでフィルターを洗う。
臭いなんて言ってられない。もう必死。
ピーターがうちの船にいる間、彼らの船はうちの船を何週もぐるぐると回りながら辛抱強く待ってくれていた。

何とかフィルターを元の位置にもどして、エンジンが動くかどうか試してみることに。

コックピットで待っていた私がエンジンをかける係。
スイッチを入れて、ボタンを・・・
あれ?あれ?
動かないぃ(涙)

Dios mio(ジーザス)
バッテリ切れなのであった(意気消沈)
修理中電気をつける為に船のバッテリーをすべて使い切ってしまって、エンジンを始動させる分が残ってなく・・・。

風力発電を見る。
けど。
まったく動かない。風ゼロ。

「いや、この船には予備バッテリーがあるから今付け替えるよ!」
パパが言った。
私とピーターが喜びの声を上げました。
そしてパパがバッテリーを付け替えるのを今か今かと待ちました。

「OK!つけて!」
よしっ。
エンジン点火!
・・・あれ?
・・・・・・・・・まだ電源こないよ。

「え?おかしいなぁ。これをこうして・・・ああして。全部オッケーなのにどうしてこないんだ?」
「おかしいなぁ。変なところないのに」
一つ一つ確認しなおす。
ピーターも覗いていろいろ質問しはじめた。
『あそこのスイッチは?』とピーターが尋ねた。

「あ、スイッチ入れるのを忘れてた!」(オーソドックスなミス 笑)

もう一度、エンジン点火!!
ドウウウウンンン!!!

やったああああああああああああああああああああああああああ(感涙)

夜中の2時半であった。


「なんとお礼を言ったらいいか・・・」
こういう場合どうお礼をしていいのかが瞬時に思い浮かばなかったので、とりあえずメールアドレスを聞こうとすると、『お礼なんていらないよ。僕も、もしこんなことになったら、誰かに助けてもらうことになるんだから、お互いさまさ。
僕らも二日前、エンジン冷却ポンプが壊れて、エンジンを直したばかりなんだ。冷却ポンプとフィルターの予備はいつも船に積んでおくのを薦めるよ』
アドバイスまでくれて、彼はにっこり笑って去っていった。

ピーターはバルセロナからイギリスへ船を持ち帰る「デリバリー・クルー・サービス」という会社で働く、プロのクルーであった。
今回私達が断念したように、北上コースはきついので、イギリスから南下して地中海で遊んで、船を残して飛行機で帰る人々の代わりに、残った船をイギリスに持ち帰るという仕事。
それもメカニック担当。

この広い海の中で、偶然通りかかったヨットに、なんとメカニック専門のプロのクルーが乗ってたんですよね。
なんて私達って運がいいのだぁ?!(驚)

いやああああ、運がいい。
だって、今までたくさんの船に出会ったけど、そんなプロに会ったためしがなかったもん。

日ごろ誠実に生きてることを神様が認めてくださったのかも~(滝涙)

とにかくである。
そんなこんなで、KUMA号はピーターに救われ、無事セント・ビンセント岬を回って、目的地ポルティマオンにたどり着くことができたのでした。
シーマンシップって、すばらしい・・・と感じた日でした。

船での発電機について、よく論じられます。
風力発電は風がないと動かない、ソーラー発電はお天気じゃないと動かない、ディーゼルを使う発電機は100万以上と高く、ガソリンの発電機は火事になりやすい。
どれを選ぶかは、経済力や旅の仕方で違ってくるわけです。
風力を付けたけれど、あと少し何かを付けたい時、
我が家のように長距離移動のオーバーナイトを前提とする船の場合、夜に使えないソーラー発電は意味がないことが明らかに。
風がない夜の為に、ガソリン発電機を予備に装備しておくのがいいと、今回のことではっきりと結論がでました。
悪いことにならないならば、こういうことはとてもよい経験になる。
もちろん、悪いことにならなかった運のよさに、まず、かえすがえす安堵したのでした。

ちなみに、寝ていたくうまは、未だにこんなことがあったなんて知らなかったりして(笑)


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by tabikuma | 2006-09-21 20:27 | 06年 ヨットの旅(portugal)

blog「くーまくーま。」より旅だけをまとめたものです。


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