決死の脱出。

最初の夜は、一晩中風が吹き荒れて。
私は眠りが浅く、ずっと風の音を聞いて、弱まる瞬間を今か今かと待っていました。
どうやらパパも同じだったらしく。
夜中に溜息をつくと決まって、「やまねえよな」と返ってくる。

いつもなら、午後に吹き始めた風は遅くとも夜中12時には治まるはずなのだけど。
普通じゃない状況が続いているという事実を認めるのが、なかなかできないわけで。

少しでも風が弱まれば出航できるのに。
と、一縷の望みを持ち続けて、結局朝になってしまいました。
昨日と変わらぬ風が、朝もビュービューです。

「なんで俺たち、こんなところを旅してるんだって思えてくるな。
エーゲ海なんてきっとつまんないんじゃね?いいよ、シラクーサとラッカでもう満足でしょ。船売って日本帰ろうぜ。」

船長、むっちゃ弱気ですやん(焦)

一日中、風ビュービューの音を聞いてると確かに滅入ってくるのです。
しかも、むっちゃ狭い島で行くところもないとなると。
って、アンカーリングしてると船から出られない上、一日中アンカーが抜けないかと不安を抱えるよりは、港に留められただけでもラッキーなんですけどね。
でも、なんでしょう、この落ち込みっぷり。
Trizonia島が彼には鬼門だったとか?
一人が落ち込むと、相方の私も元気なくなるってもんで・・・、どうしてくれるんだ!風のバカヤローーーーーっ!(叫)

夕方、風の強さに周期が出てきました。
ほんの少しだけですが弱まる瞬間があるということは、昨日より良いほうに回復してるんでは?
ネットでは後二日間強風と出ているけれど、予報なんだもん。外れることもあるんじゃない?
パパもやはり、同じように周期に気がついてい。
「明日、風が弱まって出られそうなら出航しよう」という合意で、二日目の床に入りました。

やっぱり、風の音を聞いてしまって眠れません。
この夜は何度も周期が顕著になってきた気がし、つい耳をそばだててしまう。
まだかなあ、やっぱりそうかな、まだかな、やっぱりそうかなの繰り返し。
ある瞬間、一時的に風がやむのに確信を持った時は、思わずうれしくて飛び起きてしまいましたよ。
朝の5時半でした。

外に出て風を確かめてみる。
強いときはやっぱり強い。
でも、弱まる時間が確実に長くなってないかな?
昨日まであった上空の筋雲も消えているし。
今日は出られるんじゃない?と周囲を見回したら、一艇すでに出港している船があることに気がついた。
叩きつける風で埠頭に押し付けられたヨットが動かないと、出航もできない状態だったけれど、風がやむのに合わせて押してみると、私の力でも船体を埠頭から引き離すことができるじゃない(喜)
そう思うと同時に、どこからかエンジンをかける音が聞こえた。
あの船も出港か!と思ったら、居てもたまらず船室に駆け込んで、パパを起こした。
風が弱まってる、今なら行けるから出航しよう!
寝ぼけ眼のパパを引きずって、出港準備。
今日もこの島に居ちゃ、船長が沈没しちゃいそうだもんね。早く動かなきゃさっ。


6時出航。
私たちの出航、5分遅れで、他に一艇港から出てきました。
みんな同じ気持ちだったんじゃないかなぁ(笑)

Trizonia島は、本土とわずかに離れてる島という立地なので、言わばビル風のような現象が起こっている可能性もあるのです。
外はそれほど吹いていなくても、Trizonia島付近だけは風が吹き抜けているんじゃないかと予想してました。
次の移動ポイントは、わずか2時間半の(5ノットで進む場合)Garaxidiという街。
向こうは大きな山の陰の港なので、島より状況はいいと想像できる。


が。
風の予想は外れたのです。
島を出ても一向に風は弱まらないのです。
その上、先行艇も後発艇も皆、追い風で東のコリントス方面へ向かう進路に別れ。
横風で、北に位置するGaraxidiを目指すのはKUMA号一艇になってしまい。

「・・・やっぱり、出るべきじゃなかった。
せめて、数時間風を観察するべきだったのに、失敗した。
むこうがビュービューだったら、俺たちどうすればいいんだよ。港も小さいし入れなかったらどうするよ(陰鬱)」
という、心の底からの後悔を聞いてしまい。
みんなを先導した私の判断ミス。ごめんなさいと謝るしかなく(涙)

長い長い沈黙の1時間。
泣きたくなってしまいました。
でも、波だってポルトガルのサン・ビセンテ岬で経験したのより高くないし。
別に逆風じゃないし。
まだ朝なんだから、行って決めても遅くないでしょ。
まだむこうが吹いてるかどうかわかんないし、ダメなら方向転換して追い風でコリントス行くんじゃ、ダメなわけ?!(って、なんかだんだん怒ってきてる副船長)
いやま、ほんと、すでに3分の2来てますから、腹決めるしかないわけで。



遠くの海が鏡面のように穏やかなのがなんとなく見えました。
波、なさそうよ?
「波は無いに決まってるの。山に遮られてるんだから。問題は風なんだってば」
そうよね、風よね~。

・・・と、その時。
目指す方向の港から出てきたと思われるヨットが、私たちの前方遠くを横切り始めました。
「ややや!やったあ、港に一艇分空きがでたぞっ(大喜)」
船長が元気になると、やっぱり一気に船内も明るくなる。ああよかったぁ(ヨヨヨ 涙)
その頃には起きてて、陰鬱ムードにシーンとなってたくうまも、一緒に大喜び。
いやいやよかったよかったと喜び合ってた私達でしたが。

なななんと!

波に翻弄され始めて、船体の前後のピッチングがすごくなってきたなあと思った矢先。
おもむろに方向転換して、港に戻り始めたではないかっ!えええええっ(誰かうそと言って!お願いっ 涙)
港に先に入るのは、むこうかうちか、微妙な距離(ドキドキ)


む?
なんか、むこうもKUMA号を意識してるような気がする(気のせい?)
イタリア船かあ。
・・・あ、スピードあげてない?
と、いきなりパパもむっちゃスピードあげたりして(爆)
グオオオオオンッ。

でも、向こうのほうがパワーのあるエンジンみたいで(悔)
あっさり負け(がっくし)



・・・・・・・・・つかの間の沈黙。


いやほら。
でもさ。
ここまで来て、いきなり方向転換するってことは、だ。
それまで、強風で海が荒れてることに気がつかなかったということで。
港は風が穏やかで波もないってことじゃないかな、つまり(探偵africaの思うに)

「それは、あり得る」
なんか元気になってきたぞぉ、船長っ(笑)



そんなこんなしてるうちに、山陰に入りました。
すごっ。
見事なくらい、波も風もなくなりました。

やったぁぁぁぁぁぁ!
やっぱり島を脱出してきてよかったじゃーんっ(滝涙)


遠くにもう一艇、港から出てくる船が見えました。
思わずガッツ!
あいつらの後釜が私たちだっ!!もらったぁ。


まだ、彼らは気づいていないのよね、外海がどーんなに荒れてるかって。
あんなにのんびり、家族全員水着で甲板に寝そべってリゾート気分。
ドイツ船かぁ。強風でびっくりだろうなあ。

いやいや。
気がつかれてはいかんのです(ここが正念場)
こっちものんびり穏やかな海をやってきたように、にっこり笑って手を振らねばっ。
あっちもニコニコ手を振り返す。
たぶん、変だなとは思ったに違いないけど。
私たちの格好はというと、フリースとウインドブレーカーがっつり着込んでますから(苦笑)

すり抜けていく彼らをいつまでも見送りながら、「帰ってくんなよ~!根性出せよ~」と念じたのは言うまでもない。


そして、イタリア船は元の鞘にそそくさと納まり。
見事にわずか一艇分、ドイツ船の抜けた場所が空いているだけで。
有難く、その場所に納まらせていただいたKUMA号であった。
めでたしめでたし(爆)



[PR]
by tabikuma | 2009-07-22 21:08 | 09年 船旅(最後のクルーズ)

blog「くーまくーま。」より旅だけをまとめたものです。


by tabikuma